理事長からのメッセージ
◕志ある若者の応援を
家族の大切さを否定する人はほとんどいませんが、その手前には、子どもは自分が生まれ育つ家族を選べない、という厳粛な事実があります。誰もがその家族によって決定的な影響を受けますから、まず、家族はあらゆる不平等の根源である、という認識をもたなければなりません。大人は子どもに対して、この不平等、とりわけ著しい不利益を押し付けないですむように、できる限りの努力をしなければならないと思います。
大学教育も無償にして、そのうえ学生の生活費まで出してくれる国もあるそうですが、残念ながら、日本では大学等で学ぶための自己負担が極めて重く、親などによる大きな支援なくして高校卒業後も学び続けることは困難です。
大学等進学率がかなり高くなった現在でも、児童養護施設等で高校を卒業して大学等に進学できる人は極めて限られています。また、せっかく進学しても卒業に至らず挫折してしまう比率も高いという現実があります。学生生活を楽しんできた人、楽しんでいる人は多いと思いますが、若者の夢を育むはずのキャンパスに見えにくい格差社会が拡がっていることは忘れられがちです。サークル活動やコンパ等のつきあいを存分にするという学生生活の醍醐味も、親などの支援を受けられない学生にとっては、決して身近なものではありません。高い授業料に加えてこうした学生生活の諸費用は大きな負担であり、さらに住居費や食費も必要なのですから、自分のアルバイト収入だけでは到底まかない切れません。
私たちはこうした困難を抱えながらそれに打ち勝とうとする志ある若者を応援したいと思います。こうした若者を真剣に応援しない社会に未来はない、そういう気持ちで私たちは頑張っていきますので、皆さまのご協力を心からお願いいたします。
庄司 洋子(立教大学名誉教授)